自衛消防技術試験の午前は、75分の筆記試験です。ここを通らなければ午後の実技には進めません。試験制度全体の概要は自衛消防技術試験とはで解説しています。
筆記は3つの科目に分かれていて、科目ごとに60%以上という合格基準があります。つまり全体で何点取れたかではなく、どの科目も6割を割らないことが求められます。
この記事では、科目ごとに何が問われるのかと、押さえるべき論点を整理します。全体の勉強の進め方は進め方は下記にまとめています。
出題構成:全25問・75分
一般区分の場合、筆記試験の内訳は次のとおりです。
| 科目 | 出題数 | 6割ライン |
|---|---|---|
| 火災及び地震に関する基礎的な知識 | 10問 | 6問 |
| 自衛消防業務に関する実務 | 10問 | 6問 |
| 消防関係法令 | 5問 | 3問 |
| 合計 | 25問 |
受験案内には、これとは別に「消防関係法令及び実技試験免除区分」が設けられています。この区分に該当する場合、筆記は法令5問を除いた20問になります。自分がどの区分で受験できるかは、申し込み時に受験案内で必ず確認してください。
なお実技試験は、集合方式が記述3問で15分、個別方式が行動2問で約5分という構成です。
注目すべきは消防関係法令の5問です。3問正解が必要なので、落とせるのは2問だけ。出題数が少ない科目ほど1問あたりの重みが大きく、事故が起きやすいところです。
科目1:火災及び地震に関する基礎的な知識(10問)
燃焼や消火の原理、火災の性質、建物の防災、地震時の対応などを扱う科目です。理科的な内容が中心で、暗記でしっかり得点できます。
燃焼の3要素
- 可燃物
- 酸素供給源
- 点火源(熱源)
この3つのうち1つでも取り除けば燃焼は続きません。この考え方が、次の消火作用にそのまま繋がります。
消火の4作用
| 作用 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 除去作用 | 可燃物を取り除く | ガスの元栓を閉める |
| 窒息作用 | 酸素を遮断する | 泡消火、二酸化炭素消火 |
| 冷却作用 | 温度を下げる | 水による消火 |
| 抑制作用 | 燃焼の連鎖反応を止める | ハロゲン化物、粉末消火 |
「水消火器はなぜ電気火災に使えないのか」といった形で、消火剤と火災の種類を組み合わせて問われます。
火災の種類
- A火災(普通火災):木材、紙、繊維など
- B火災(油火災):ガソリン、灯油など
- C火災(電気火災):電気設備が絡む火災
消火器のラベルにある色の丸(A=白、B=黄、C=青)とセットで覚えておくと、実技の集合方式でも使えます。
煙の性質
火災で亡くなる原因の多くは煙です。押さえるべきは流動速度です。
- 水平方向:およそ0.5〜1m/秒(人の歩く速度より遅い)
- 垂直方向:およそ3〜5m/秒(階段を駆け上がる速度より速い)
縦方向の移動が圧倒的に速いというのがポイントで、これが「階段室やエレベーターシャフトが煙の通り道になる」「上階への避難は危険」という判断につながります。
フラッシュオーバーとバックドラフト
- フラッシュオーバー:室内の可燃物から出た可燃性ガスに一気に着火し、部屋全体が燃え広がる現象
- バックドラフト:酸素が不足した室内に、扉の開放などで急に空気が入り、爆発的に燃焼する現象
名前の取り違えを狙った問題が出やすいところです。
地震に関する項目
この科目には地震も含まれます。震度階級、家具の転倒防止、地震後の出火防止(ブレーカーを落とす、ガスの元栓を閉める)、通電火災などが問われます。
科目2:自衛消防業務に関する実務(10問)
現場で何をするかを問う科目です。実務経験がある人にとってはいちばん取りやすく、未経験者にとってはイメージが湧きにくい科目でもあります。
自衛消防組織の任務分担
火災が起きたとき、誰が何をするかの役割分担です。
| 班 | 主な任務 |
|---|---|
| 通報連絡班 | 119番通報、館内への周知、消防隊への情報提供 |
| 初期消火班 | 消火器・屋内消火栓による初期消火 |
| 避難誘導班 | 在館者の避難誘導、避難経路の確保 |
| 安全防護班 | 防火戸・防火シャッターの閉鎖、電気やガスの遮断 |
| 応急救護班 | 負傷者の救護、救急隊への引き継ぎ |
それぞれの班が何をする係かを問う問題は頻出です。特に「安全防護」は名前から内容が想像しにくいので、防火区画の形成(防火戸を閉める)が主任務だと覚えておいてください。
火災発見時の行動順序
- 火災の発見・確認
- 通報(119番)と館内への知らせ
- 初期消火
- 避難誘導
順序を入れ替えた選択肢が出ます。「まず消火」ではなく、通報と知らせが先という点が引っかけどころです。
初期消火の限界
炎が天井に達したら初期消火は断念し、避難に切り替えます。この判断基準はよく問われます。
避難誘導の原則
- 出火階と直上階を優先する
- エレベーターは使用しない
- 煙の中では姿勢を低くする
- 誘導は大きな声と明確な指示で
消防用設備等の取扱い
消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、非常放送設備、避難器具、スプリンクラー設備などの基本的な使い方と設置目的。実技の個別方式とも直結する範囲なので、ここを固めると一石二鳥です。
設備の具体的な操作手順は扱っています。
科目3:消防関係法令(5問)
出題は5問と少ないですが、範囲も狭いので短時間で仕上がる科目です。取りこぼしが致命傷になるぶん、確実に取りにいく価値があります。
防火管理者
- 甲種と乙種の区分
- 選任が必要な防火対象物の規模
- 消防計画の作成と届出
- 統括防火管理者(管理権原が分かれている建物に必要)
消防用設備等の点検・報告
| 点検の種類 | 頻度 |
|---|---|
| 機器点検 | 6か月に1回 |
| 総合点検 | 1年に1回 |
報告の頻度は建物の種類で変わります。
- 特定防火対象物(不特定多数が出入りする建物):1年に1回
- 非特定防火対象物:3年に1回
「点検は6か月と1年」「報告は1年か3年」という2段構えを混同しやすいので、表で整理して覚えてください。
特定防火対象物とは
デパート、飲食店、ホテル、病院、劇場など、不特定多数の人が出入りする、あるいは避難が困難な人がいる建物です。規制が厳しくなる対象で、法令の問題では前提としてよく登場します。
防炎物品
高層建築物や地下街などでは、カーテン、じゅうたん、暗幕などに防炎性能のあるものを使う義務があります。
東京都の火災予防条例
自衛消防技術試験は東京消防庁が実施する試験なので、東京都独自の火災予防条例が関わってきます。自衛消防技術認定証の配置義務そのものが、この条例に基づくものです。
得点戦略
優先順位
- 自衛消防業務に関する実務(10問) — 実技にも直結するので投資効率が最も高い
- 火災及び地震に関する基礎的な知識(10問) — 出題数が多く、暗記で安定して取れる
- 消防関係法令(5問) — 範囲が狭いので後半に一気に詰める
時間配分
75分で25問なので、1問あたり3分の計算です。実際には見直しの時間を確保したいので、1問1分半〜2分で通し、残りを見直しに回すペースが安全です。時間が足りなくて解けない、という試験ではありません。
捨て科目を作らない
繰り返しになりますが、合格基準は各科目60%以上です。総合点で挽回する仕組みがないので、「どの科目も6割を確実に超える」ことだけを目標にしてください。満点を狙う必要はありません。
まとめ
- 筆記は全25問・75分。基礎知識10問、実務10問、法令5問
- 各科目60%以上が合格基準。捨て科目は作れない
- 基礎知識は燃焼と消火の原理、煙の流動速度、フラッシュオーバーが軸
- 実務は自衛消防組織の任務分担と、火災発見時の行動順序が軸
- 法令は防火管理者と点検・報告の頻度を表で整理する
科目バランスを本番どおりに練習する
「自衛消防技術試験対策アプリ」の学科模擬テストは、全25問・制限時間75分、科目の出題バランスも本番に準拠しています。
科目ごとの正答率が分かるので、「どの科目が6割を割っているか」がそのまま見えます。苦手科目を作らないことがこの試験の要なので、そこを可視化する作りにしました。
- ひたすら問題集:200問を繰り返し演習(無料で10問まで)
- 学科模擬テスト:全25問・75分、合否判定つき
- 実技模擬テスト:集合方式・個別方式に対応
