自衛消防技術試験の筆記試験25問のうち、10問を占めるのが「火災及び地震に関する基礎的な知識」です。実務経験がないと直感的に分かりにくいテーマも多いこの分野を、出題されやすいポイントごとに整理して解説します。
1. この分野の位置づけと出題数
学科試験は全25問(4肢択一・75分)で構成され、そのうち「火災及び地震に関する基礎的な知識」は10問出題されます。全体の4割を占める最重要分野であり、ここを確実に得点できるかどうかが合否に直結します。
内容としては中学校の理科で習うような燃焼の仕組みが土台になっているため、一つずつ理解していけば決して難しい分野ではありません。
2. 燃焼の三要素と消火の4原理
燃焼が続くためには「可燃物」「酸素供給源」「点火源(熱源)」の3つがすべて揃っている必要があります。このどれか一つを取り除けば火は消えるため、消火の原理もこの3要素に対応しています。
- 除去効果:可燃物を取り除く(ガスの元栓を閉める、燃えている物を運び去るなど)
- 窒息効果:酸素の供給を断つ(泡や二酸化炭素で燃焼面を覆うなど)
- 冷却効果:温度を下げる(水をかけるなど)
- 抑制効果(負触媒効果):燃焼の化学的な連鎖反応を薬剤で阻害する(ハロゲン化物消火剤など)
試験では「この消火方法はどの効果に当たるか」という形で問われることが多いため、代表的な消火剤(水・泡・粉末・二酸化炭素)がそれぞれ主にどの効果を利用しているかをセットで覚えておくと得点しやすくなります。
3. 燃焼の形態(表面燃焼・分解燃焼・蒸発燃焼・内部燃焼)
可燃物の種類によって、燃え方(燃焼形態)が異なります。
- 表面燃焼:木炭やコークスのように、可燃性ガスをほとんど発生させず物質表面がそのまま酸素と反応する
- 分解燃焼:木材やプラスチックのように、熱分解によって発生した可燃性ガスが燃える
- 蒸発燃焼:ガソリンや灯油のように、液面から発生する蒸気が燃える
- 内部燃焼(自己燃焼):ニトロセルロースのように、物質自体が酸素を含んでおり外部からの酸素供給が少なくても燃焼が進行する
「木材がなぜ燃えるのか(直接ではなく、熱分解したガスが燃えている)」という理屈を理解しておくと、応用的な設問にも対応しやすくなります。
4. 火災の種類(A火災・B火災・C火災)
火災は燃えている物によって分類され、それぞれ適応する消火器が異なります。
- A火災(普通火災):木材・紙・繊維などによる火災
- B火災(油火災):ガソリンや天ぷら油などの可燃性液体による火災
- C火災(電気火災):配電盤やコンセントなど通電中の電気設備が関係する火災
消火器の本体には適応する火災の種類を示すマークが表示されており、この分類と対応関係は頻出のポイントです。
5. 電気火災の原因(漏電・短絡・過電流)
電気火災の原因として問われやすい3つの現象を整理します。
- 漏電:絶縁劣化等により、本来流れるべきでない経路(大地など)に電流が漏れ出す現象
- 短絡(ショート):電線同士が直接接触し、大電流が流れる現象
- 過電流(過負荷):たこ足配線などで、許容量を超えた電流が流れ続ける現象
ここでよく出る引っかけが「ヒューズやブレーカーが作動すること自体は出火原因ではない」という点です。ヒューズの溶断やブレーカーの作動は、こうした異常を検知して事故を未然に防ぐ「安全装置の正常な働き」であることを覚えておきましょう。
6. 危険物の基礎知識(引火点・発火点・第4類)
消防法上の危険物は性質ごとに第1類〜第6類に分類されており、警備・防災の現場でよく関わるのは第4類(引火性液体)です。ガソリン・灯油・エチルアルコールなどがこれに該当します。
重要な用語を整理します。
- 引火点:液面付近の蒸気に火を近づけたとき燃え出す最低の液温
- 発火点(自然発火温度):外部の点火源がなくても物質自らが発火する温度(一般に引火点より高い)
ガソリンの蒸気は空気より重く、低い場所に滞留しやすいという性質も、警備業務上の安全知識としてよく問われます。
7. 熱の移動(伝導・対流・放射)とフラッシュオーバー・バックドラフト
熱の伝わり方には3種類あります。
- 伝導:物体内部を熱が直接伝わる(フライパンの持ち手が熱くなるなど)
- 対流:温められた気体・液体が移動して熱を運ぶ(暖房で部屋全体が暖まるなど)
- 放射(ふく射):媒介する物質なしに、電磁波の形で熱が直接伝わる(たき火の熱を離れた場所でも感じるなど)
この知識を土台に、以下の2つの危険な火災現象も押さえておきましょう。
- フラッシュオーバー:室内の可燃物や可燃性ガスが放射熱により一斉に発火温度に達し、爆発的に燃え広がる現象
- バックドラフト:酸欠状態で燻焼していた室内に急激に新鮮な空気が流入し、爆発的に燃焼する現象
8. 物質の状態変化
固体・液体・気体の状態変化に関する用語も出題されます。
- 融解:固体→液体
- 気化(蒸発):液体→気体
- 凝縮:気体→液体
- 昇華:固体→気体(液体を経ない)※ドライアイスが代表例
9. 地震に関する基礎知識
地震分野では、以下のような防災上の実践知識が問われます。
- 地震発生直後は落下物から身を守ることを最優先し、揺れが収まってから火気の始末や避難経路の確保を行う
- 家具の転倒防止にはL字金具や突っ張り棒等が有効
- 停電復旧時の「通電火災」を防ぐため、避難前にブレーカーを落としておく
- エレベーター内に閉じ込められた場合は、無理に自力脱出せず非常用インターホンで連絡し救助を待つ
10. まとめ
「火災及び地震に関する基礎的な知識」は、燃焼の仕組みという一貫した土台の上に、消火・電気火災・危険物・熱の移動といった関連知識が積み重なっている分野です。丸暗記に頼らず、一つ一つの現象を理屈で理解していくことで、初めて見る設問にも対応しやすくなります。
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試験全体の流れについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
本記事の内容は、公開されている一般的な消防・防災知識をもとに執筆したオリジナル解説です。試験の出題内容や基準は変更される場合があるため、受験の際は必ず東京消防庁の公式サイトで最新情報をご確認ください。
