警備員目線で考える、サイバー攻撃と情報漏洩|警備とサイバーセキュリティの関係

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いま起きていること:ランサムウェア被害は半期で過去最多

警察庁の公表では、2026年上半期(1〜6月)のランサムウェア被害は123件で、統計開始以降の半期として過去最多でした(@IT記事、警察庁の公表は2026年9月10日)。内訳は中小企業79件、大企業31件、団体など13件。業種別では製造業が37件で最も多くなっています。被害組織への聞き取りでは、侵入経路は VPN 機器が約5割でした。

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向けでも、1位は「ランサム攻撃による被害」、2位は「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」、7位に「内部不正による情報漏えい等」が入っています。

大企業だけの話ではありません。取引先や委託先が止まれば、自分の勤務先にも影響が出ます。警備会社も、ビルや施設の入退館記録、防犯カメラの映像、巡回報告を預かる立場です。

「警備」と「サイバーセキュリティ」は同じ仕事?法律の上では別です

警備業法第2条は、警備業務を4つに分けています(条文)。

  1. 1号:事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等での盗難等の事故を警戒し、防止する業務(施設警備)
  2. 2号:人や車両が雑踏する場所、通行に危険のある場所での負傷等の事故を警戒し、防止する業務(雑踏・交通誘導)
  3. 3号:運搬中の現金、貴金属、美術品等の盗難等の事故を警戒し、防止する業務(運搬警備)
  4. 4号:人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務(身辺警備)

条文に「サイバー」や「情報システム」の言葉は出てきません。ネットワーク上の不正アクセスを監視・対処する仕事は、この4つのどれにも書かれていません。これは条文の文言からの読み方です。契約や業務の範囲を決めるときは、勤務先の会社や、警備業を監督する公安委員会に確認してください。

つまり、現場の警備員の仕事と、サイバーセキュリティ(情報セキュリティ)の仕事は、法律の上でも、職業としても別の分野です。ただし、「物理の警備」と「情報の守り」は、同じ建物の中でつながっています。

警備の現場とつながる3つの接点

1. 入退管理・防犯カメラなど、ネットつながりの機器

IPAは、ビルや施設の入退管理システムを、IoT機器を含む「特定用途機器」の一つとして扱い、調達と運用のときに情報セキュリティの要件を確かめるチェックリストを公開しています(IPA「入退管理システム チェックリスト」)。鍵やカメラを守る機器自体が、ネットワークを通して狙われる側になり得る、という考え方です。現場の警備員は、これらの機器を毎日見ている、いちばん近い人です。

2. 防災センター・守衛室のパソコンと記録

日報、鍵の貸出簿、来訪者名簿、カメラ映像。警備の現場には、人の名前や行動の記録が集まります。ここからは一般的な考え方ですが、これを扱うパソコンや紙の名簿が無防備だと、情報漏洩の入口になります。IPAの10大脅威2026で、7位に「内部不正による情報漏えい等」が入っているのも、外からの攻撃だけではなく、中の人や記録の扱いが課題だということです。

3. 人の出入りそのもの

ネットの攻撃でも、最後に「建物の中の端末」に触れることがあります。不審な人をサーバー室や執務室に入れない。これは、警備員が今も毎日やっている、入退館管理そのものです。

攻撃は「人の隙」から入る:警備員の出番

ここからは一般的に知られている手口です。ネットからの攻撃でも、最後は建物の中の人や端末が使われることがあります。現場で気づきやすいのは次のようなものです。

  • なりすまし訪問:点検業者や工事業者、宅配便を装って入り込む。事前連絡と照合していない人は、理由があっても通さない。
  • 共連れ:前の人についてゲートを通る。入退管理の機械が完璧でも、ここで穴があく。
  • 見慣れない機器・USBの置き忘れ:拾って使わせる、あるいはこっそり設置する。見つけたら触れずに報告。
  • 内部不正・持ち出し:資料や端末を人目のないところで持ち出す。同僚や顧客側の社員でも、ルールは同じ。

警備員に求められるのは、サイバー攻撃を自分で防ぐことではありません。ルールどおりに確認し、異常に気づいたらすぐに報告することです。これは、警備業務の基本と同じです。

現場の警備員が今日からできること

勤務先のルールが最優先です。その上で、次のようなことを意識するだけでも、現場の守りは大きく変わります。

  • □ 来訪者受付と入館証のルールを、例外なく守る
  • □ 共連れを見つけたら、その場で声をかける
  • □ 工事・点検業者は、事前連絡と照合してから通す
  • □ 見慣れないUSB・機器を見つけたら、触れずに報告する
  • □ 防災センター・守衛室のパソコンは、離れるときに画面をロックする
  • □ パスワードをメモして貼らない、私物USBをつながない
  • □ 来訪者名簿・鍵の貸出簿は、他の人に見えない場所に置く
  • □ カメラや入退管理機器の停止・表示のおかしさを、「たぶん故障」で終わらせず報告する
  • □ 不審なメールや添付ファイルは、開く前に上司や担当に確認する

報告は、「間違っていたら恥ずかしい」と思わずに出すのがいちばん大事です。異常のいちばん最初のサインを拾えるのは、現場にいる人だけです。

キャリアの視点:情報セキュリティの知識は、警備員の強みになる

情報セキュリティの資格をとるのは必須ではありません。ただ、現場を知っている警備員がこの分野も学ぶと、「現場の守り」を情報の守りと結びつけて考えられる人になります。IPAの試験区分では、次の3つが入門から高度までの目安になります(IPA試験区分一覧)。

試験IPAの位置づけ対象
ITパスポート試験共通的知識すべての社会人
情報セキュリティマネジメント試験基本的知識・技能ITを活用する者(安全な利用を推進する人)
情報処理安全確保支援士試験高度な知識・技能情報処理技術者(登録セキスペ)

警備の資格との組み合わせで考えると、施設警備や防災センターの業務に、機器やネットワークの知識を加える道があります。機械警備(機器で異常を感知して遠隔で対応する警備)も、機器と通信の知識が活きる分野です。自分に合うルートを、ゆっくり選んでください。

まとめ:警備とサイバーは別の仕事ですが、同じ建物を守っています

警備業法の上では、警備とサイバーセキュリティは別の分野です。ただし、入退管理の機器、防災センターのパソコンと記録、人の出入りのどれも、現場の警備員が毎日触れているものです。ランサムウェア被害が半期で123件と過去最多になったいま、「ルールどおり確認し、異常を報告する」という警備の基本動作は、情報を守るうえでも役に立ちます。

警備の資格をこれから目指す方や、キャリアの道を考えている方は、次のページもあわせてご覧ください。

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